目上には失礼?「よろしくお伝えください」の正しい敬語と返信マナー
商談の別れ際やビジネスメールの結びで、何気なく使っている「よろしくお伝えください」という一言。同僚や親しい取引先とのやり取りでは潤滑油として機能するこの定番フレーズですが、実は送る相手やシチュエーションを一歩間違えると、相手に「上から目線で指図された」と受け取られかねない危うさを孕んでいます。
Indeedキャリアガイド編集部が2026年3月26日に更新したキャリア実態データや大手人材育成機関の調査でも、新入社員のみならず中堅ビジネスパーソンでさえ「言伝(ことづて)の敬語処理」に戸惑い、現場で摩擦を起こす事例が報告されています。本記事では、この表現がなぜ失礼にあたる場合があるのかという敬語の構造的背景を解き明かし、取引先に抜群の好印象を残すスマートな言い換えや、相手から言われたときの完璧な返答マナーまで徹底解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:「よろしくお伝えください」は文法的には正しい敬語であるものの、「〜ください」という依頼・指示のニュアンスを含むため、立場が上の相手に対して使うと失礼にあたるリスクがある。
- 要点2:目上の取引先や自社の上司に依頼する場合は「よろしくお伝え願えますでしょうか」や「申し伝えていただけますと幸いです」といった謙譲・依頼表現へ言い換えるのが鉄則。
- 要点3:相手から「よろしくお伝えください」と言われた際は、「承知いたしました。〇〇に申し伝えます」と即答し、社内報告まで確実に完結させる姿勢がビジネスの信頼を左右する。
【真相解明】「よろしくお伝えください」は目上に失礼?知っておくべき敬語の境界線
ビジネスの現場で「〇〇部長にもよろしくお伝えください」と口にした瞬間、相手が一瞬怪訝な表情を浮かべた——そんな苦い違和感を経験したビジネスパーソンは少なくありません。この表現がなぜ目上の人物に対してリスクを伴うのか、言語学的な敬語解説と組織コミュニケーションの観点から掘り下げます。
文法上、「お伝えください」は動詞「伝える」に接頭辞「お」と補助動詞「ください」を組み合わせた正当な尊敬表現です。しかし、問題の本質は語形ではなく相手に課すアクションの性質にあります。「〜ください」は元来、命令形「くれ」の丁寧語であり、本質的に「相手に特定の動作を促す(=指示・要求する)」響きを排除できません。
つまり、取引先の役員や自社の上司など自分より目上の人に対して発すると、「あなたが私のメッセンジャーとなって、第三者に挨拶を届けてきなさい」と指図しているかのような不遜な構造が生まれてしまうのです。これが、ビジネスマナーの現場で「失礼な理由」として厳しく指摘される構造的トラップです。相手に対する敬意を十全に示すためには、相手が主導権を握る「ご依頼」の形へと昇華させる配慮が欠かせません。

【徹底比較】相手別の最適表現と伝言ビジネスマナー一覧表
ビジネスコミュニケーションにおける伝言は、相手と自分、そして「伝える対象(第三者)」の力関係によって適切なトーンが劇的に変化します。2025年から2026年にかけて実施された主要ビジネスマナー調査および実務慣行に基づき、相手別の最適な言い換え表現をまとめました。
| 相手の立場・対象 | 推奨される言い換え表現 | 敬語レベル・適切度 | 編集部の見解・注意点 |
|---|---|---|---|
| 目上の取引先・役員 | 〇〇様によろしくお伝え願えますでしょうか 〇〇様にお言伝(ことづて)をお願いできますでしょうか | ★★★★★(極めて高い敬意) | 相手の手間を配慮し、疑問形や仮定形で打診することで押し付けがましさを完全に排除できる。 |
| 社内の直属の上司 | 恐れ入りますが、〇〇部長にお伝えいただけますでしょうか | ★★★★☆(高丁寧) | そもそも上司に言伝を頼む行為自体が例外的。やむを得ない伝達時のみクッション言葉を添えて使用。 |
| 同格の取引先担当者 | 〇〇様によろしくお伝えください 〇〇様にもよろしくお伝えいただければ幸いです | ★★★☆☆(標準的ビジネスマナー) | 日常的な関係性であれば問題なく通用するが、改まったメールでは「幸いです」を添えるとスマート。 |
| 同僚・親しい後輩 | 〇〇さんによろしく伝えておいてね | ★★☆☆☆(フランク) | 社内チャット等で多用されるが、公的な業務報告の場では敬語の使い分けを意識したい。 |
【実態検証】「伝えておきます」は地雷?相手から言われたときのスマートな返し方
商談を終えて辞去する際、相手から「あ、本日は不在の佐藤部長にもよろしくお伝えください」と声をかけられたとき、あなたはどう返答しているでしょうか。「はい、伝えておきます」と即座に答えてしまった経験があるなら、今日から意識をアップデートする必要があります。
ビジネスパーソンを対象にしたマナー調査によると、取引先からの「よろしくお伝えください」に対して「伝えておきます」と答えた担当者に対し、約4割の管理職が『雑で馴れ馴れしい』と感じた経験があると回答しています。「〜ておきます」という語尾は準備や放置のニュアンスを含み、対外的なやり取りとしては軽薄に映ってしまうからです。
プロの現場で求められる返答の黄金パターンは、「かしこまりました。〇〇に申し伝えます」の一択です。
ここで重要なのは、「伝える」の謙譲語である「申し伝える」を正確に選ぶこと。自分側の人間(上司や同僚)に対して伝達する行為は自社の内側の動作であるため、相手に対してへりくだる「申し伝える」を用いるのが文法的に正当です。さらに、帰社後に「〇〇社の田中様が、部長にくれぐれもよろしくとのことでした」と対象者に報告して初めて、このビジネスマナーは完成します。言伝を預かったまま握りつぶすのは、ビジネスにおける最大の信義則違反です。

【シーン別】取引先に信頼されるビジネスメール例文と英語表現の実践
テキストコミュニケーションが主流となった現在、メールの末尾に添える「よろしくお伝えください」のニュアンスは、行間の体温を左右する決定打となります。すぐに実務へ転用できる洗練された例文を状況別に整理しました。
パターン1:目上の取引先へ送るメールの結び
「プロジェクトの進捗につきましては、追って資料をお送りいたします。
末筆ではございますが、いつもご指導をいただいております専務の〇〇様にも、何卒よろしくお伝え願えますでしょうか。貴社のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。」
パターン2:以前お世話になった担当者へ挨拶を託す場合
「本日の打ち合わせ、誠にありがとうございました。
また、以前の案件で大変お世話になりました〇〇様へも、私より深く感謝申し上げていた旨をお伝えいただけますと幸いに存じます。」
グローバルビジネスで役立つ英語表現
外資系企業や海外クライアントとのやり取りにおいて、この「よろしくお伝えください」に該当するフレーズは必須の教養です。英語圏では形式的な上下関係よりも親愛の情を込めるのが通例です。
- Please give my best regards to Mr. Smith.(スミス氏によろしくお伝えください=最も汎用性の高いフォーマル表現)
- Please pass along my warmest regards to the team.(チームの皆様に温かいご挨拶をお伝え願えますでしょうか)
- Please remember me to Ms. Johnson.(ジョンソン様によろしくお伝えください=親しい知人・取引先への伝統的で温かみのある表現)
一般に知られていない盲点とネットの誤解|社内上司への使い方の落とし穴
ネット上のQ&AサイトやSNSでは、「上司に対して『よろしくお伝えください』と言っていいか」という議論がしばしば紛糾しています。一部の解説サイトでは「上司に対しても丁寧に『お伝え願えますでしょうか』と言えば問題ない」と書かれていますが、これは現場の力学を無視した危険な誤解です。
組織論の観点から言えば、部下が上司に向かって「自分の代わりに誰かへ挨拶を届けること」を依頼する行為そのものが、職務権限の倒錯を生み出します。上司は部下の伝書鳩ではありません。社内の別部署の役員や他社の上層部に挨拶を伝えたい場合、上司に頼むのではなく「自分自身が直接メールや対面で挨拶に出向く」のが本筋です。
どうしても出張先の上司に挨拶の言づてを託さなければならない特別な事情がある場合は、単なる敬語の変換にとどまらず、以下のような心理的クッションを前置きする配慮が不可欠です。
「大変不躾なお願いで恐縮ではございますが、もし〇〇様にお目にかかる機会がございましたら、私〇〇が大変感謝していた旨を一言お添えいただけますと幸甚に存じます。」
このように、「自分のために動かせる」のではなく「機会があれば触れていただく」という謙虚な姿勢を示すことで、上司への心理的負荷を劇的に軽減できます。
【プロの結論】コミュニケーションの摩擦を防ぐ「使い分けの絶対基準」
言葉の選択は、単なるマナーテストの正誤判定ではなく、相手との心理的距離と関係性を測るバロメーターです。言葉遣いで失敗しないための明確な判断基準を提示します。
【この表現を使って良い相手・場面】
対等な立場の取引先担当者、日常的に連絡を取り合っているパートナー企業、または懇意にしている社外の知人。「いつもお世話になっている同僚の〇〇さんにもよろしくお伝えください」といった、気軽な好意の共有には極めて有効です。
【別の表現へ切り替えるべき(または避けるべき)相手・場面】
自社の上司・役員、取引先の経営層、クレーム対応中や厳格な契約交渉中の相手。これらの対象に対して「よろしくお伝えください」をそのまま使うのは厳禁です。相手に対するリスペクトが要求される場では、依頼疑問形(〜お伝え願えますでしょうか)を用いるか、そもそも伝言に頼らず自分発信のダイレクトなメッセージを送る決断を下してください。
【よろしくお伝えください】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:取引先から「〇〇部長によろしくお伝えください」と言われ、社内に戻ったら何と報告すべきですか?
A1:帰社後速やかに、「本日〇〇社の担当者様とお話しした際、部長によろしくお伝えくださいと言伝を預かりました」と報告します。相手の言葉をそのまま伝え、預かったメッセージを滞りなく届けた旨を伝えるのが確実です。
Q2:メールで「よろしくお伝え願えますでしょうか」は二重敬語などの間違いになりませんか?
A2:文法的な間違いではありません。「お伝え」は謙譲語または尊敬語の接頭辞であり、「願えますでしょうか」は「願う」に可能動詞と丁寧語を重ねた表現です。失礼にあたる二重敬語(同一の単語に同じ種類の敬語を重ねること)には該当せず、ビジネス文書として非常に丁寧な依頼文として広く定着しています。
Q3:直接面識がない相手に対しても「よろしくお伝えください」と伝言を頼んで良いですか?
A3:面識がない相手に対して「よろしく」と伝えるのは不自然に映ります。その場合は「直接お目にかかったことはございませんが、〇〇プロジェクトを担当されております〇〇様にも、平素の御礼をお伝えいただけますと幸いです」といった、文脈を補足した丁寧な言い回しを選びましょう。
まとめ:伝言の一言がビジネスパーソンの品格と信頼を決める
「よろしくお伝えください」という短いフレーズには、日本語特有の敬語の機微と、人間関係への繊細な配慮が凝縮されています。形式的な正しさに安住せず、「この依頼は相手に負担を強いていないか」「メッセンジャー役を押し付けていないか」という想像力を働かせることが、一流のビジネスパーソンたる条件です。
相手の立場に応じた適切な言い換えを使いこなし、言伝を受けた際には「申し伝えます」と淀みなく応じる。その一つひとつの積み重ねが、あなたのプロフェッショナルとしての信頼を強固なものにしていきます。 (出典: よろしく お伝え ください(Yahoo!ニュース))