送り盆はいつ行う?7月と8月の地域差や送り火の時間帯・片付け解説
お盆の終わりを告げる「送り盆」は、家に迎えたご先祖様の御霊(みたま)を感謝とともに再び浄土へとお見送りする大切な日です。しかし、カレンダーを前に「送り盆は具体的にいつ執り行うのが正しいのか」「送り火は何時ごろ焚くべきなのか」と疑問を抱く方は少なくありません。
日本全国を見渡すと、お盆の時期は「7月」と「8月」に分かれており、地域ごとの風習や住環境によって送り火の作法も大きく異なります。特に都市部を中心としたマンション暮らしの増加に伴い、伝統的な火を焚く儀式には安全面での工夫が求められています。本稿では、送り盆の正確な日程から時間帯、火の焚き方、後片付けの正しい手順まで、現場の最新実情を踏まえて徹底的に解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:送り盆は全国的には「8月16日」、東京など都市部では「7月16日」の夕方(17時〜19時前後)に行うのが基本。
- 要点2:7月盆と8月盆の地域差は、明治初期の改暦(太陽暦導入)と農繁期の重なりを避けるための合理的な歴史的背景に起因する。
- 要点3:マンション等の集合住宅ではLED提灯やお線香による代替が推奨され、精霊馬や供え物は川に流さず塩で清めて家庭処分するのが現代のマナー。
送り盆はいつ行うのが正解?7月と8月で地域差が生じた歴史の真相
送り盆を行う日程は、地域によって大きく2つに分かれています。全国の約8割を占める一般的な地域では8月16日、東京の下町や横浜、静岡県の一部地域などでは7月16日が送り盆に該当します。いずれの場合もお盆の期間は4日間であり、初日の「迎え盆(13日)」に対して、最終日を「送り盆(16日)」と呼びます。
そもそも、なぜ日本国内でこれほど明確な地域差が生まれたのでしょうか。歴史を紐解くと、明治5年(1872年)の太陰暦から太陽暦(グレゴリオ暦)への改暦が決定的な転換点となっています。明治政府の改暦によって暦が約1カ月前倒しになった際、新暦の7月中旬は農村部において田植えや養蚕が最も忙しい農繁期のピークと重なってしまいました。
農作業を休んで先祖供養を執り行うことが困難だった農村部では、ひと月遅らせた8月15日(月遅れのお盆)を採用しました。一方で、農業従事者が少なかった東京などの大都市部では新暦通りの7月にお盆を行う風習がそのまま定着しました。この産業構造の違いこそが、現在まで続く「7月盆と8月盆の地域差」を生み出した構造的要因です。
| 項目 | 詳細・数値データ | 一般的な基準・相場 | 編集部の見解・評価 |
|---|---|---|---|
| 8月盆(月遅れ盆) | 期間:8月13日〜16日 全国シェア:約80%以上 | 地方都市・農村部全般、関西、東海、東北など | 日本の国民的夏休み(お盆休み)と一致しており、帰省文化と直結する主流形態。 |
| 7月盆(新暦盆) | 期間:7月13日〜16日 全国シェア:約15%前後 | 東京都内、横浜市の一部、静岡市街地、金沢旧市街 | 官公庁や商業地を中心に定着。ビジネス街では通常通りの平日に儀式を行うケースが多い。 |
| 旧暦盆(旧盆) | 太陰太陽暦の7月13日〜15日 年ごとに日付が変動 | 沖縄県、奄美群島など南西諸島地域 | 旧暦7月15日をウークイ(送り盆)とし、伝統的なエイサーを伴う濃厚な共同体行事。 |
| 送り火の時間帯 | 日没前後(17:00〜19:00頃) 燃焼時間:約5分〜15分程度 | 薄暗くなり火の灯りが見える時間帯が理想的 | 「少しでも長く家にいてほしい」という名残惜しさから夕暮れ以降に行うのが本義。 |

送り火の時間帯と迎え火との違い|オガラ(麻殻)の正しい燃やし方
送り盆の夕方に欠かせない儀礼が「送り火」です。点火する時間帯は、薄暗くなり始める17時〜19時頃の夕暮れ時が最適とされています。これには、初日に行う「迎え火」との明確な心理的・宗教的な対比が存在します。
迎え火は「ご先祖様が一刻も早く自宅に帰って来られるように」との願いを込め、13日の午前中から遅くとも夕方にかけて火を灯して足元を照らします。対照的に、送り火は「ご先祖様に少しでも長く我が家に滞在してほしい」という名残を惜しむ心情から、16日の夕方、日が暮れてから焚くのが古来の習わしです。
送り火の燃料には、皮を剥いだ麻の茎である「オガラ(麻殻)」を用います。麻は古来より清浄な植物とされ、悪い気を祓う力があると信じられてきました。素焼きの平皿である「焙烙(ほうろく)」の上にオガラを井桁(いげた)状や折って重ね、マッチやチャッカマンで火をつけます。
煙とともに立ち上る炎に手を合わせ、家族揃って感謝の祈りを捧げます。炎が収まった後は、火種が完全に消えるまで目を離さず、水をかけて確実に消火することが必須です。住宅街の戸建て住宅で庭や玄関先にスペースがある場合は、風で燃えかすが飛ばないよう細心の配慮を払ってください。
【実態検証】マンション事情と現場のリアル|現代型送り火の実践法
仏事関連の業界調査によると、都市部における集合住宅(マンション・アパート)の居住率は6割を超えており、伝統的な火焚き儀礼の現場には大きな変化が押し寄せています。SNSや相談窓口には「マンションのベランダでオガラを焚いても良いのか」「火災報知器が作動しないか不安だ」といった切実な声が多数寄せられています。
結論から申し上げますと、マンションのベランダや共用廊下で実際に火を焚く行為は厳禁です。大半の分譲・賃貸マンションでは管理規約によってバルコニーでの火気使用が明確に禁止されており、オガラから出る大量の煙は隣戸への迷惑や火災報知器の誤作動、思わぬ火災トラブルに直結します。
現代の生活環境に適応した「現代型送り火」の実践パターンは以下の通りです。
- LEDろうそく・コードレス提灯の点灯:火を一切使わず、玄関の内側やベランダの内側に灯りを灯し、送り火の代わりとして祈りを捧げる方式。現在の都市部では最も普及している選択肢です。
- 室内での短時間のお線香:仏壇の前で通常より香りの良いお線香を焚き、その煙をご先祖様を見送る目印とする方法。窓を開けて煙を外へと導きます。
- 玄関先での極小規模な焚き火(条件付き):戸建てに近い1階専用庭など規約上許可されている環境に限り、金属製の深皿の中でオガラを1〜2本だけ小さく折って短時間で燃やし切る方法。必ず手元に消火用の水を用意します。
形に過度にとらわれるあまり規約違反や事故を起こしては、ご先祖様に対する供養になりません。清浄な明かりを手向ける心こそが何よりも重要視されます。

新盆・初盆の送り火マナーと盆提灯の片付け・保管方法
故人が亡くなって四十九日の忌明け後に初めて迎えるお盆を「新盆(しんぼん・にいぼん)」または「初盆(はつぼん)」と呼びます。通常のお盆とは送り火や飾り物のマナーに決定的な違いがあります。
新盆において最も象徴的なのが「白紋天(しろもんてん)」と呼ばれる純白の提灯です。故人の霊が初めて自宅へ迷わず戻れるように飾るもので、1回限りしか使用しません。かつては送り盆の夜、白紋天を送り火の炎にくべて燃やす風習がありましたが、現在では火災の危険や住宅環境の制約から、火を灯した後に菩提寺へ納めてお焚き上げしてもらうか、自宅で一部を少しだけ燃やす真似をしてから処分するのが通例となっています。
一方、親族から贈られる絵柄付きの盆提灯は毎年使用するため、丁寧な片付けと保管が求められます。
- 片付けの時期:送り盆の翌日である8月17日(7月盆の場合は7月17日)の午前中に片付けるのが一般的です。地域によっては16日の送り火直後に片付けるケースもあります。
- 清掃と防虫:和紙や絹で作られた提灯は非常にデリケートです。柔らかいハタキでホコリを払い、金属や木枠の指紋を乾拭きします。虫食いを防ぐため、必ず人形用や着物用の無香料防虫剤を化粧箱に同封してください。
- 保管場所:湿気と直射日光を嫌うため、押し入れの上段や天袋など、乾燥した風通しの良い場所に保管します。
精霊馬の処分方法と誤解の是正|川に流すのはNG?現代の供養作法
きゅうりで作った馬と、なすで作った牛である「精霊馬(しょうりょううま)・精霊牛(しょうりょううし)」。きゅうりの馬には「ご先祖様が一刻も早く自宅へ帰って来られるように」、なすの牛には「お帰りの際は景色を眺めながらゆっくりとあの世へ戻ってほしい」という深い祈りが込められています。
この精霊馬やお供え物の処分方法について、インターネット上ではいまだに「川や海に流すのが古くからの伝統」という言説が見受けられます。しかし、現代社会において川や海、山林に精霊馬やお供え物を投棄する行為は、河川法や廃棄物処理法、各自治体の環境美化条例に抵触する違法行為です。
現代における正しい処分手順は、礼節を尽くした家庭内での処理です。以下の3つのステップを踏むことで、敬意を保ちながら適法に処分できます。
- お供えを引く:送り火を焚き終えた16日の夜、または17日の朝にお仏壇や盆棚から精霊馬とお供え物を下げます。
- 塩で清める:清潔な半紙や白い紙の上に精霊馬を置き、これまでの感謝を念じながらひとつまみの粗塩を振りかけて清めます。
- 包んで処分する:半紙で丁寧に包み、地域の可燃ごみ(生ごみ)として収集に出します。他の生活ごみとは別の小袋に入れ、一番上に重ねて出す配慮をするとより丁寧です。
なお、お供えしていた果物や乾物などの飲食類は、傷んでいなければ送り盆の当日に家族で「お下がり」としていただくことが最大の供養とされています。腐敗が進みやすい夏の時期ですので、衛生状態の確認は怠らないようにしてください。

夏の夜空を彩る京都五山送り火と精霊流し・灯籠流しの意味と時間
家庭内で行われる私的な送り火と並行して、地域共同体全体で先祖や無縁仏の霊を盛大に見送る伝統行事が全国各地に現存します。その最高峰として知られるのが、京都の夏の風物詩である「京都五山送り火」です。
毎年8月16日の20時00分、東山にそびえる如意ヶ嶽の「大文字」に火が灯るのを皮切りに、松ヶ崎の「妙法(20:05)」、西賀茂の「船形(20:10)」、金閣寺付近の「左大文字(20:15)」、そして嵯峨の「鳥居形(20:20)」へと順次点火されていきます。漆黒の夜空に浮かび上がる五つの巨大な炎は、家庭の送り火と同様に、この世に滞在した精霊たちを迷うことなく冥府へと導く巨大な道標の役割を果たしています。
長崎県を中心に行われる「精霊流し(しょうろうながし)」も強い存在感を放ちます。毎年8月15日の夕方から深夜にかけて執り行われ、初盆を迎えた遺族が手作りの「精霊船」を担ぎ、爆竹の破裂音と鐘の音を轟かせながら街を練り歩きます。耳をつんざく爆竹の音には魔を祓う意味が込められており、悲しみを乗り越えて明るく故人を送り出すという独自の死生観が凝縮されています。
全国の河川や海岸で催される「灯籠流し(とうろうながし)」の多くは、8月16日の18時〜20時頃に実施されます。水面に浮かぶ無数の灯火は、先祖供養であると同時に、戦没者や水難事故の犠牲者を悼む鎮魂の儀式として、現代の都市部においても人々の心を癒やすグリーフケアの場となっています。
【プロの結論】先祖供養の民俗学・家族社会学的アプローチと現代の教訓
先祖供養の儀礼を家族社会学の観点から分析すると、単なる迷信や宗教的義務を超えた、家族の絆の再確認と世代間トラウマの緩和という極めて重要な心理的機能が見えてきます。年に一度、先祖のルーツを振り返り、自分という存在が幾重もの命の連なりによって生かされている事実を自覚することは、自己肯定感の回復と精神的な安定をもたらします。
しかし、現代社会においては「実家から押し付けられる過度な伝統作法」や「本家・分家の力関係」が原因で、お盆の行事が家族間の軋轢や精神的負担を生むケースも少なくありません。古来の形式を完璧になぞることだけが供養の本義ではありません。
【プロの結論】送り火の選択基準|環境に応じた最適な供養法
- 伝統的送り火(オガラ・焙烙)を行うべき人:
- 戸建て住宅で安全な屋外スペース(庭や広い玄関先)を確保できる家庭。
- 消火設備を整え、近隣への煙の影響を事前に配慮できる環境にある世帯。
- 現代型代替手段(LED・お線香・礼拝)を選ぶべき人:
- マンション・アパートなどの集合住宅に居住し、ベランダが共有部分に指定されている家庭。
- 煙アレルギーの家族やペットがいる、または火の取り扱いに不安のある高齢者世帯。
- 「形式を守れないから」と罪悪感を抱く必要は皆無です。仏教の本質は「心(意業)」にあり、形にとらわれすぎて周囲と摩擦を起こすことは供養の精神に反します。
【送り 盆 いつ】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:送り盆の日が台風や大雨の場合はどうすればいいですか?
A1:無理に屋外で送り火を焚く必要はありません。雨天時は玄関の内側や仏壇の前でお線香を多めに焚くか、LED提灯を灯して静かに合掌してください。悪天候によってご先祖様が道に迷うことはありませんので、安全を最優先に判断してください。
Q2:仕事の都合で送り火を16日の夕方にできません。午前中や15日に繰り上げても大丈夫ですか?
A2:16日の朝や午前中に送り火を焚いて出勤される家庭は多く存在し、何ら失礼には当たりません。「少し早くなりますが、道中お気をつけてお帰りください」と心の中で念じながら見送りましょう。ただし、15日は「中日」にあたりご先祖様が家に滞在されている時間ですので、見送りは16日に行うのが原則です。
Q3:浄土真宗では迎え火や送り火をしないと聞きましたが本当ですか?
A3:事実です。浄土真宗の教義では、亡くなった方はすぐに阿弥陀如来のお導きによって極楽浄土に往生(成仏)し、いつでも私たちを見守ってくださっていると考えます。そのため、特定の時期に霊が行き来するという概念がなく、迎え火や送り火、精霊馬などの準備を行いません。通常通り仏壇を整え、お念仏を称えて報恩感謝を捧げます。
まとめ:ご先祖様を心残しなく見送るために
送り盆は、私たちが現世で平穏に暮らせていることへの感謝を先祖に伝え、命のつながりを再認識するための節目です。日付は全国的には8月16日、東京など新暦の地域では7月16日の夕暮れ時に行われます。
時代が移り変わり、住環境が日本家屋から高層マンションへと移行しても、送り火に込められた「名残を惜しみ、無事の旅路を祈る」という本質は変わりません。オガラの煙を立ち上らせる伝統的な儀式であれ、LEDの柔らかな光に祈りを託す現代的な作法であれ、真摯に向き合う心そのものが最高の供養となります。無理のない安全な方法を選び、心残しのない清らかな気持ちで送り盆を迎えてください。 (出典: 送り 盆 いつ(Yahoo!ニュース))