『できるかな?あたまからつまさきまで』なぜ夢中に?歌と体操の秘密
世界的な絵本作家エリック・カールが遺した数々の名作の中でも、『はらぺこあおむし』と並び、保育園や幼稚園、そして家庭で驚異的なリピート率を誇るロングセラー絵本が『できるかな? あたまからつまさきまで』(偕成社)です。詩人・工藤直子氏による軽快な日本語訳と、ページをめくるたびに現れる色鮮やかな動物たちの呼びかけに、子どもたちは目を輝かせ、吸い寄せられるように全身を動かし始めます。
単なる読み聞かせにとどまらず、シンガーソングライターの新沢としひこ氏による楽曲や体操の振り付け、リトミック指導案の題材として教育現場でも定番化している本書。なぜこれほどまでに子どもたちの身体と心を掴んで離さないのか、対象年齢ごとの実践法や現場の口コミ、教育的効果まで徹底的に取材・検証しました。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:エリック・カールの鮮烈なコラージュと工藤直子氏の躍動的な言葉が生み出す「まねっこ遊び」が、子どもの自己効力感と身体認識を刺激する。
- 要点2:新沢としひこ氏の手がけた楽曲と体操の振り付けにより、保育現場のリトミックや運動遊びに最適な参加型教材として定着している。
- 要点3:対象年齢は1歳から就学前まで幅広く対応し、定価1,320円(税込)という手頃さや英語原書『From Head to Toe』への拡張性も極めて高い。
【徹底解剖】名作絵本『できるかな?あたまからつまさきまで』が子どもに大人気の理由
名作絵本『できるかな? あたまからつまさきまで』が、発行から四半世紀以上を経た現在も世代を超えて熱烈に支持され続ける背景には、子どもの発達心理と行動特性を巧みに捉えた3つの明確な仕掛けが存在します。
第1の理由は、エリック・カール特有の「ティッシュペーパーを切り貼りした鮮やかなコラージュアート」がもたらす視覚的引力です。ペンギン、キリン、サル、ゾウ、ワニといった動物たちが、白を基調とした背景の上に圧倒的な存在感で描かれています。余計な背景描写を削ぎ落とし、動物の「動かす部位」に視線が自然と集中する構図設計がなされているため、まだ集中力が続きにくい低年齢児でも直感的に動作を理解できます。
第2の理由は、詩人・工藤直子氏が手がけた日本語訳のリズム感です。原書『From Head to Toe』の英語表現を単に直訳するのではなく、「あたまを くるんと まわせるよ」「ゆす ゆす ゆっさゆさ」「どしん どしん どっしん」といった、耳に心地よく残るオノマトペ(擬音語・擬態語)を大胆に散りばめました。この言葉の響きそのものが、子どもの運動スイッチを刺激する呼び水となっています。
そして最大の核心が、「きみは できる?」という問いかけと、「できるよ できる!」という返答が織りなすコール・アンド・レスポンスの対話構造です。動物からの挑戦に対して、小さな子どもが同じポーズを取って応える。このシンプルなやり取りの反復が、幼少期に最も重要な「自分でできた」という達成感と自己肯定感を爆発的に満たしていきます。

【年齢別ガイド】対象年齢と発達に合わせた読み聞かせのコツ
偕成社の公式案内や書誌データでは「3歳から」とされることが多い本書ですが、実際の家庭や保育現場では、乳児期から就学前まで子どもの発達段階に応じた幅広い楽しみ方が実践されています。
0歳〜1歳:スキンシップと視覚・聴覚の刺激として
自分で身体を思い通りに動かせない時期は、大人が動物の真似をして見せるだけでも十分に楽しめます。「ぼくは ペンギン」のページでは親が赤ちゃんの頭を優しく撫でたり、「あしを どしん どしん」の場面では赤ちゃんの足裏をくすぐったりと、親子のスキンシップ絵本として活用するのがコツです。エリック・カールの鮮烈な色彩は、視覚が発達途上にある乳児の追視訓練にも適しています。
2歳〜3歳:まねっこ遊びの黄金期と自己主張の芽生え
全身の粗大運動が活発になり、模倣(まねっこ)欲求がピークを迎える2歳前後が、この絵本が最も爆発的な効果を発揮する時期です。ここでは、読み手が大げさな身振り手振りで「きみは できる?」と問いかけ、子どもが「できるよ できる!」と叫びながら身体を動かすのを笑顔で受け止めます。大人が先にポーズを取るのではなく、子どもの自由な身体表現を待って見守ることが、自主性を引き出す最大の秘訣です。
4歳〜就学前:全身協調運動と英語原書『From Head to Toe』への発展
身体の各部位を器用にコントロールできるようになる幼児期後半では、バランス感覚や柔軟性を意識した全身運動へとステップアップできます。また、日本語版に親しんだ後は、原書である英語絵本『From Head to Toe』を取り入れる手法が有効です。"I am a penguin and I turn my head. Can you do it?" "I can do it!"という繰り返しの英語フレーズが、身体の動きと連動して無理なく子どもの耳に定着していきます。
思わず踊り出す「歌」と「体操の振り付け」の魅力|新沢としひこが創り出した音楽の魔法
『できるかな? あたまからつまさきまで』を語る上で欠かせないのが、子どもたちを一瞬で笑顔にする「できるかなの歌」の存在です。保育ソングのカリスマとして知られるシンガーソングライター・新沢としひこ氏が楽曲を手がけ、絵本の世界観を見事なダンスナンバーへと昇華させました。
この楽曲は、エリック・カールの原画が持つ力強い生命力を、軽快で弾むようなアップテンポのリズムで再現しています。歌詞は絵本のテキストに忠実に沿って展開され、首(ペンギン)から始まり、首、肩、腕、手、胸、背中、腰、膝、足、そして足の親指へと、文字通り「頭からつま先まで」身体の部位を順番に動かしていく構成です。
体操の振り付けは非常に合理的で、準備運動から整理運動までの要素が自然に組み込まれています。例えば、ゴリラのように胸をドンドン叩く動作は上半身の解放を促し、ネコのように背中を弓なりに反らせる動きは体幹の柔軟性を養います。保育園の運動会や朝の会でこの曲が流れると、普段は恥ずかしがり屋な子どもまでもが一斉に立ち上がり、笑顔で「できるよ できる!」と飛び跳ねる光景は、現場では日常的な風物詩となっています。

保育現場における「ねらい」とリトミック指導案への実践的アプローチ
文部科学省の幼稚園教育要領や厚生労働省の保育所保育指針において、領域「健康」および「表現」の指導は極めて重視されています。『できるかな? あたまからつまさきまで』は、これら複数の領域を自然に横断できる極めて優れた教育素材です。
保育指導案を作成する際、本作品を活用する主な「保育のねらい」は以下の3点に集約されます。
- 動物の模倣を通じて身体の各部位に意識を向け、多様な動きを楽しむ(健康・運動機能)。
- リズムに合わせて言葉と身体を連動させ、表現する喜びを味わう(表現・リトミック)。
- 保育士や友だちと一緒に「できた!」という達成感を共有し、表現への自信を育む(人間関係・自己肯定感)。
以下は、実際に多くの保育現場で採用されているリトミック活動の基本指導案モデルです。
| 項目 | 詳細・数値データ | 一般的な基準・相場 | 編集部の見解・評価 |
|---|---|---|---|
| 書誌基本情報 | 定価1,320円(税込) 作:エリック・カール 訳:工藤直子(偕成社) | 幼児向け大型ハードカバー絵本の相場:1,300円〜1,600円前後 | 数年間ハードに使い倒せる耐久製本。コスパは絵本界でもトップクラス。 |
| 運動・身体的負荷 | 12種類の動物+人間 全身12箇所の部位可動 所要時間:約3〜5分 | 乳幼児の集中力持続時間(年齢+1分、2〜3歳で約3〜5分)に完全合致 | 飽きずに最後までエネルギーを発散できる完璧な時間・構成設計。 |
| 教育・リトミック効果 | 頭頂から足先へ向かう順行性 身体図式(ボディスキーマ)形成 即時反応力・模倣力向上 | リトミックにおける「模倣期(1〜3歳)」の指導目標を網羅 | 医学・発育学的にも理にかなった「頭尾の法則」に沿った身体運用。 |
| 市場評価・満足度 | Amazon評価★4.7 絵本ナビ130件超レビュー 保育士支持率極めて高水準 | 児童書平均★4.2〜4.4前後 | リピート読み率・実用面での口コミ評価が突出して高い。 |
【実態検証】利用者の生の声と現場目線で見えたリアル
実際の愛読者や保育の現場からはどのような声が上がっているのか。大手レビューサイトや出版元の偕成社に寄せられた読者の反響、SNSコミュニティの声を取材・分析しました。
偕成社の読者カードには、「初回で5回連続で読まされました!2歳の娘の今一番のお気に入りです」「2歳の孫が家でずっと謎の歌を口ずさんでいて、保育園でこの絵本を読んでいると聞いてすぐ買いに行きました」といった熱烈なエピソードが多数寄せられています。保育現場での体験が家庭へ波及し、家庭内でもアンコールが止まらなくなる好循環が生まれています。
一方、現場の保護者や保育者によるリアルな検証からは、以下のような「実体験に基づく留意点」も浮かび上がっています。
- 「寝かしつけの絵本には絶対に向かない」という共通見解:読めば読むほど子どものテンションが跳ね上がり、ベッドの上でジャンプを始めてしまうため、就寝前の静かな読み聞かせには不適当。雨の日の室内遊びや、午睡明けの目覚まし体操として読むのが正解。
- 大人の体力消耗:「子どもと一緒に本気で12種類のポーズをやると、大人のほうが息切れする」という声も少なくありません。特にロバのキックやラクダの膝曲げは、大人の運動不足解消やストレッチとして機能している側面もあります。

一般に知られていない盲点とネットの誤解
知名度が高い作品ゆえに、インターネット上や保護者の間ではいくつかの固定観念や誤解も見受けられます。これらを正しく認識することで、絵本のポテンシャルをさらに引き出すことが可能です。
誤解1:上手にポーズが取れないと意味がない?
「うちの子はまだ片足立ちができない」「ワニの動きがぎこちない」と思い悩む保護者がいますが、それは完全な誤解です。この絵本の神髄は、正確な体操のフォームを習得させることではありません。「やってみようとする意志」と「自分の身体への気付き」こそが目的であり、子どもが自分なりにアレンジした珍妙なポーズであっても、「できたね!」と全力で肯定してあげることが最も大切です。
誤解2:『はらぺこあおむし』と同じように静かに鑑賞すべき作品?
同じエリック・カール作品であるため、じっくりと絵を鑑賞させようとするケースがありますが、本作は明確に「フィジカル・アクティブ・ブック(身体参加型絵本)」として設計されています。子どもが座っていられないことを叱るのではなく、立って動き回ることを前提とした環境(周囲の安全確保やスペースの確保)を整えて読み聞かせに臨む必要があります。
【プロの結論】発達心理学の視点とおすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
発達心理学および小児運動学の視点から見ると、『できるかな? あたまからつまさきまで』は、乳幼児期における「身体図式(ボディスキーマ)」の獲得を劇的に促進する構造を持っています。人間は成長過程において、「自分の頭がどこにあり、腕がどう動き、足の指がどこで踏ん張っているか」を感覚の統合によって学習していきます。本作は「あたま」からスタートし、徐々に下降して「つまさき」に至るという身体解剖学的な順序(頭尾の法則)に忠実に構成されており、子どもの自己身体感覚を育む上で極めて合理的な教育的価値を持っています。
おすすめできる人・環境
- 身体を動かすことが大好きな1歳〜4歳児のいる家庭:雨の日や猛暑で外遊びが制限される際の室内アクティビティとして無類の強さを発揮します。
- 保育園・幼稚園・リトミック教室の指導者:導入の掴みや、集団活動でのアイスブレイク教材として抜群の一体感を生み出せます。
- 英語教育に自然な形で親しませたい保護者:日本語版で動作を完全に理解させた後、英語版『From Head to Toe』へ移行することで、全身反応教授法(TPR)の効果を家庭で再現できます。
慎重になるべきシチュエーション
- 就寝前のおやすみ絵本を探している場合:前述の通り、覚醒水準を高めて興奮を誘発するため、夜の入眠儀式には適しません。
- 集合住宅で階下への足音が極端に気になる環境:ゾウの足踏みやロバのキックなど、床を強く踏む動作が含まれるため、防音マットの上で行うなどの配慮が必要です。
【できるかな? あたまからつまさきまで】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:新沢としひこさんが歌う「できるかなの歌」の音源はどこで聴けますか?
A1:新沢としひこ氏の公式CDアルバム(『新沢としひこプロデュース エリック・カール絵本うた』など)に収録されているほか、Apple MusicやSpotify、Amazon Musicなどの主要音楽配信プラットフォームでも配信されています。保育現場向けのCD付き書籍としても流通しています。
Q2:日本語版と英語原書『From Head to Toe』はどちらを先に買うべきですか?
A2:まずは日本語版をおすすめします。詩人・工藤直子氏による生き生きとした日本語オノマトペに親しみ、「きみは できる?」「できるよ できる!」というやり取りの楽しさを身体で体感した後に英語版を導入すると、英語のフレーズが驚くほどスムーズに身体感覚として定着します。
Q3:ボードブック版(小型の厚紙仕様)と大型ハードカバー版の違いは何ですか?
A3:ボードブック版は頑丈な厚紙で作られており、乳幼児が舐めたり引っ張ったりしても破れにくく、持ち運びに便利です。一方、通常ハードカバー版や大型本は、開いたときの絵の迫力が段違いであり、集団への読み聞かせや、ダイナミックな世界観を味わいたい場合に最適です。子どもの年齢や用途に合わせて選ぶのが確実です。
まとめ:あたまからつまさきまで身体いっぱいに広がる親子のコミュニケーション
『できるかな? あたまからつまさきまで』は、単に受け身で物語を聞く読書体験を打ち破り、子ども自身が主役となって物語を演じる喜びを教えてくれる、稀有な体験型絵本です。
エリック・カールが描いた力強い命の色彩と、工藤直子氏が紡いだ弾むような言葉、そして新沢としひこ氏の陽気な音楽。これらが三位一体となることで、子どもたちは自分の身体を動かす面白さに目覚め、「できた!」という確固たる自信を獲得していきます。
子どものエネルギーを持て余した日や、親子で思い切り笑い合いたいとき、ぜひ本を開いて問いかけてみてください。「きみは できる?」――返ってくる誇らしげな「できるよ できる!」の声と全力のポーズは、かけがえのない親子の宝物になるはずです。 (出典: できるかな あ たま から つ まさき まで(Yahoo!ニュース))